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2026.07.29
不動産相続事例:父親の自慢の山は「負動産」だった……いらない土地を相続したら?【司法書士監修】

処分に困るいらない土地=負動産を処分し、生前整理した事例をもとに解説
親が土地を持っていることは知っていても、その土地がどこにあるのか、どのような状態なのか、相続したあとに売れるのかまで把握できているとは限らない。
特に、山林や畑、古家がある土地は注意が必要だ。使い道がなく、買い手もつかずに土地の処分に困ったまま、固定資産税だけが発生してしまう……といった問題が出てくることもある。
これを、相続人の負担になる不動産=「負動産」と呼ぶことがある。
今回紹介するのは、親が所有していた山林や畑が「負動産」であるという現実に直面した子が、将来の相続を見据えて生前整理を進めた福岡市内の事例である。
最終的には、民間の引き取り先を調整し、古家の解体費用なども含めて100万円を超える費用をかけて処分することになった。
前編では当社・エヌプロで担当させていただいた、実際の相談内容と解決までの流れをレポート。後編では司法書士の協力を得て、このトラブルを法律・制度の面から解説する。
前編:「俺は山を持っている!」バブル全盛期の見栄が子の負債に……

相談者様ご家族。息子、娘はまだ20代だ(イメージ)
「相続予定の土地を処分できるか、調べたいのですが」
そんな福岡市にお住まいの相談者様からのご連絡で、今回の相続トラブルは始まった。伺ったところによると、相談者様のお父様は、福岡から遠く離れた長崎県対馬市に土地を持っているという。
「でも、所有者である父も、行ったことのない場所だというんですよ」
相談者様は、半ばあきれたように笑う。
対馬といえば、東シナ海と日本海の間にある巨大な離島だ。そこの山に土地を持っているといっても、どんな山なのか。今どのような状態になっているのか。売れるのか、誰かに使ってもらえるのか。万が一、トラブルの原因になるのではないか。何も分からないまま、自分の代で相続することになる。さらにそれを、子どもへと引き継がせることにもなる。
この土地が、将来子どもに遺せるものなのか——。相談者様の頭の中にあったのは、漠然とした不安だった。
現実は「崖」「使えない農地」「古家」

対馬市内に点在する相談者様が相続予定の土地(イメージ)
エヌプロではまず、各種の書類を調査するところから始めた。しかし、実は土地の全体像を把握することは難しい。
固定資産税の通知書、登記情報、名寄帳。書類をくまなく確認すれば、地番や筆数、地目は分かる。今回のケースは、山林が10筆、畑が4筆。合計14筆だった。
なかなかの広さであるが、山林の場合、書類上の地番が分かったとしても、実際に現地でどこからどこまでが自分の所有地なのかは判断しにくい。
エヌプロでは、できる限り現地調査を行った。その結果、土地の実際の姿が見えてきた。
裏手が崖になっている山林の土地。荒れ果てており、今後も農地として利用しにくい畑。誰のものか分からない、住み手不在の古家。
——なぜ、そんな、どうにもならない土地を持っていたのか?
「バブル全盛のときに買ったというんですよね。俺は山を持っているぞ、と。見栄ですよ、見栄」
相談者様はため息をつく。
たしかに、日本が好景気に湧いていた時期には「土地持ち」がステータスである時代があった。「もっと土地価格が上がる」という幻想もあっただろう。それが山林や森の中、原野など、資産価値が限りなくゼロに近い土地であっても。
しかし、現実はそうではない。そもそも福岡に住んでいる相談者様とご家族にとって、120km以上離れた離島・対馬にある山林や畑を日常的に管理し、利活用することは到底できない。
次のステップは、「処分」の手段を探すことだった。
売却も国有化もできない……「負動産」が確定

相続予定の荒れ果てた土地。資産価値はマイナス……(イメージ)
土地の整理を考えたとき、最初に頭に浮かぶのは「売却」だろう。まずエヌプロのほうで、土地の買い手を探させていただいた。
しかし、不動産を扱う視点では、山林と畑にはそれぞれ独特の難しさがある。
まず、山林は買い手が限られる。キャンプや林業、隣地との統合など、特定の目的がなければ購入にはつながりにくい。立地が良くない、アクセスが難しい、土地の境界が明確でないなどの条件が重なると、さらに難しくなる。
畑には、制度上の制約がある。農地は一般の土地とは異なる取り扱いを受ける。誰でも自由に買えるわけでも、売れるわけでもない。
今回も、山林・畑ともに通常の売却では、まったく買い手がつかなかった。
——では、現金化はあきらめて、土地を国に返せばどうか?
そう考えるのは自然な発想だ。実際に、相続した土地を一定の条件のもとで国に帰属させる「相続土地国庫帰属制度」がある。
しかし、今回は崖や古家があり、制度の要件に該当しないため申請には至らなかった。
問題となったのは「崖」と、土地に建つ「古家」である。崖があり、通常の管理に過分な費用や労力がかかる土地は承認されない場合がある。さらに、建物が残っている土地は、相続土地国庫帰属制度の申請対象から外れる。
売却してお金を得ることもできない。ゼロ円でも、国へ帰属させることもできない。父親の自慢の山は、まさに「負動産」だった。
それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。
将来のために覚悟を決め「有料引き取り(処分)」へ

エヌプロでは、提携する司法書士の協力を得て手続きを進めた(イメージ)
「有償でもいいから、処分してください」
相談者様は覚悟を決めていた。このまま相続しても負担でしかなく、いずれ利用するあてがあるわけでもない。今ここで生前整理しなければ、この問題はそのまま自分の子どもへ引き継がれる。管理できない土地を抱えたまま、次の世代が同じ壁にぶつかることになる。
エヌプロでは、民間の引き取り先を調整する方向で動いた。山林や畑など一般の買い手がつかない土地でも、専門的に処分・整理を行う不動産業者につなぐことで、出口を作れる場合がある。
古家の解体をはじめ、各種申請にかかる費用もすべて持ち出しになる。100万円を超える出費となり、相談者様にとって決して軽い負担ではなかった。
我々としては、相談者様のきっぱりとした決断は英断であったと思う。もし相続が発生してから動き始めていたら、土地の把握、農地の調査、古家の解体の検討など、すべてを相続人として急いで進めなければならなかった。その状況を想像すると、今動いておいた意味は大きい。
土地を手放すために、お金を払う。相続人にとっては手痛い事例だが、「自分の代で片をつける」という意志に、子や孫が助けられることもある。
後編:山林・畑・古家付き土地を相続する前に知っておきたい制度と注意点
前編の事例を踏まえ、ここからは制度・法律の観点から整理します。なぜ山林や畑、古家付き土地は相続で問題になりやすいのか、どのような選択肢があり、何に注意すべきか。順を追って解説します。

制度解説・監修:藤本一英(FNG司法書士事務所)
司法書士・行政書士・宅地建物取引士・ファイナンシャル・プランナー。不動産登記、相続・遺言に関する手続きを中心に幅広く業務を行う。
なぜ、山林や畑が売れない土地=「負動産」になりやすいのか

不動産は、本来であれば資産です。しかし、山林や畑、古家付きの土地は、条件によっては「持っているだけで負担になる不動産」になることがあります。
主な理由は以下のとおりです。
- 買い手が限られる
- 現地確認や境界確認が難しい
- 管理の手間と費用がかかる
- 固定資産税が継続して発生する
- 建物がある場合は、老朽化や解体費用の問題がある
- 農地の場合は、売買や転用に制度上の制限がある
- 国や自治体に必ず引き取ってもらえるわけではない
特に遠方の山林や畑は、相続人が日常的に管理できないことが多く、放置されやすい傾向があります。しかし、所有者である以上、管理責任や費用負担の問題は残ります。「親が土地を持っているから安心」ではなく、「その土地は本当に使えるのか、売れるのか、管理できるのか」を確認しておくことが重要です。
山林を相続する前に確認すべきこと
山林を相続する可能性がある場合、まず確認したいのは土地の場所と状態です。
固定資産税の通知書や登記情報で地番は分かっても、実際に現地へ行くと境界が分かりにくいことがあります。山の中では、道路からどの範囲が所有地なのか判断しづらいケースも少なくありません。
確認すべき主な点は以下のとおりです。
- 所在地・地番
- 面積・地目
- 接道の有無
- 境界の状況
- 崖や急傾斜地の有無
- 隣地との関係
- 建物や工作物の有無
- 日常的に管理できる距離か
- 買い手や引き取り先が見つかる可能性があるか
山林は、場所によっては固定資産税の負担が大きくないこともあります。しかし、税額が低いからといって問題がないわけではありません。倒木、土砂崩れ、隣地への影響、境界トラブルなど、管理しないことで将来的なリスクが生じる可能性があります。書類上の情報だけでなく、不動産としての出口を相続前に確認しておくことが大切です。
畑を相続する前に確認すべきこと
畑は、宅地と同じように自由に売買できるとは限りません。
農地を売買または貸借する場合、農地法に基づく農業委員会の許可などの手続きが必要です。農林水産省は、農地の売買・貸借には法律に基づく手続きが必要であり、許可を受けずに行った権利移動は無効と説明しています(出典:農林水産省「農地をめぐる事情について」)。
つまり、畑を相続したからといって、すぐに第三者へ売却できるわけではありません。確認すべき主な点は以下のとおりです。
- 現在も農地として使われているか
- 耕作している人がいるか
- 農地として維持できる状態か
- 農地転用が可能か
- 近隣に買い手となる農業者がいるか
- 農業委員会への相談が必要か
特に、農地転用が難しい畑は活用の幅が限られます。住宅地や駐車場として使えると思っていた土地でも、制度上の理由で転用できないことがあります。畑を相続する可能性がある場合は、早い段階で農業委員会や専門家へ確認することが重要です。
古家付き土地は、建物の問題が別途発生する
土地の上に古家がある場合、問題は土地だけではありません。建物の管理と解体費用も考える必要があります。
使われていない建物は、時間が経つほど老朽化します。屋根や外壁の損傷、草木の繁茂、害虫・害獣の発生、台風や地震時の近隣への影響など、管理上のリスクが増していきます。また、土地を売却したり引き取ってもらったりする際にも、古家が残っていることで条件が厳しくなることがあります。
解体費用は、建物の規模・構造・立地条件によって変わります。山間部や離島、重機が入りにくい場所では、通常より費用が高くなることも少なくありません。
古家がある場合、事前に確認しておきたい点は以下のとおりです。
- 建物が使える状態か
- 空き家になっていないか
- 解体が必要か
- 解体費用の目安
- 接道や搬入経路
- 土地を手放す際に建物が支障になるか
「相続土地国庫帰属制度」とは
相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たす場合に、土地を国庫に帰属させることができる制度です。法務省によると、相続した土地を管理できずに放置され、将来の所有者不明土地が発生することを予防する目的で創設され、令和5年4月27日から開始されています(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度について」)。
ただし、この制度はすべての土地を引き取る制度ではありません。法務省は、申請できない土地として以下のものを挙げています(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」)。
- 建物がある土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 通路など、他人による使用が予定される土地
- 土壌汚染がある土地
- 境界が明らかでない土地

さらに、崖がある土地や、通常の管理・処分に過分な費用や労力がかかる土地についても、承認されない場合があります(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。
山林・畑・古家付き土地の場合、こうした条件に該当する可能性があります。「相続土地国庫帰属制度を使えばよい」と単純に判断できないことを、事前に理解しておく必要があります。
相続土地国庫帰属制度が使えない場合に考える選択肢
相続土地国庫帰属制度が使えない場合、他の出口を検討する必要があります。主な選択肢は以下のとおりです。
- 売却する
- 隣地所有者に相談する
- 農地なら、近隣農家や農業委員会に相談する
- 自治体への寄付を相談する
- 民間の引き取り業者に相談する
- 相続放棄を検討する
ただし、いずれにも注意点があります。売却は、買い手が見つからなければ成立しません。自治体への寄付も、必ず受け入れてもらえるわけではありません。民間引き取りも、土地の状態や費用条件によって対応可否が変わります。相続放棄は、後述のとおり特定の土地だけを放棄できる制度ではありません。
どれか1つの方法に決め打ちするのではなく、土地の状態に応じて複数の選択肢を比較することが重要です。
相続放棄は「いらない土地だけ放棄する」制度ではない
山林や畑を相続したくない場合、相続放棄を考える方もいます。
相続放棄とは、被相続人の権利や義務を一切受け継がない手続きです。裁判所は、相続人が選択できるものとして、すべてを受け継ぐ「単純承認」、一切を受け継がない「相続放棄」、相続で得た財産の限度で債務を負担する「限定承認」の3つを挙げています。また、相続放棄は原則として、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります(出典:裁判所「相続の放棄の申述」)。
ここで注意すべきは、相続放棄は「山林や畑だけを放棄する」制度ではないという点です。預貯金、宅地、マンションなどのプラスの財産も含め、相続するか放棄するかを一括して判断する必要があります。
山林や畑以外にも財産がある可能性がある場合、相続放棄が最適とは限りません。相続放棄を検討する場合は、相続財産全体を確認したうえで、司法書士や弁護士などの専門家に相談することが重要です。
「民間引き取り」という選択肢
売却が難しく、相続土地国庫帰属制度も使えない場合、民間の引き取り先を探す方法があります。
民間引き取りとは、山林・畑・古家付き土地など、一般の買い手がつきにくい土地を専門的に引き取る事業者へ相談する方法です。ただし、通常の売却とは異なり、費用を支払って引き取ってもらうケースもあります。
費用には、以下のようなものが含まれることがあります。
- 古家の解体費用
- 登記や名義変更に関する費用
- 行政書士・司法書士などの専門家費用
- 将来の固定資産税や管理負担を見込んだ費用
- 現地調査費用
- 境界や権利関係の確認費用
費用負担はありますが、将来にわたって管理し続ける負担や、子ども世代に問題を残すリスクと比較したうえで判断することが大切です。
生前整理として土地の出口を確認しておく際のポイント

山林や畑、古家付き土地の問題は、相続が発生してから初めて気づくことが多いものです。しかし、相続後に動き始めると、以下のような問題が重なりやすくなります。
- 相続人同士で方針がまとまらない
- 土地の場所や状態が分からない
- 書類収集に時間がかかる
- 農地・山林の制度確認が必要になる
- 解体費用などの負担で揉める
- 引き取り先が見つからない
- 相続放棄の期限が迫る
親が山林や畑を持っている場合、生前のうちに最低限、以下を確認しておくことをおすすめします。
- どこに土地があるのか
- 地目と筆数
- 固定資産税の額
- 建物の有無
- 管理している人がいるか
- 売却できる可能性があるか
- 国庫帰属制度の対象になりそうか
- 民間引き取りを検討できるか
「相続が発生してから考える」のではなく、「相続が発生する前に出口を確認する」ことが、家族の負担を減らす第一歩です。
不動産は生前整理(土地処分)が正解 専門家に相談を
親が山林や畑を持っていることが分かったら、まず資料を集めましょう。固定資産税の納税通知書、名寄帳、登記簿、公図、地積測量図、農地に関する資料などがあると、専門家に相談しやすくなります。
ただし、書類を見ても判断できないことは多くあります。山林として売れるのか、畑として引き取り先があるのか、古家を解体する必要があるのか、国庫帰属制度を使えるのか、民間引き取りで整理できるのか——これらは、土地の状態や家族構成、相続財産全体によって判断が変わります。
エヌプロでは、相続不動産の売却だけでなく、山林・畑・古家付き土地のように出口が見つかりにくい不動産についても、司法書士や行政書士などの専門家と連携しながら生前整理を支援しています。
「親が持つ土地を子どもに残してよいか不安がある」
「山林や畑の整理方法が分からない」
「相続前に土地の出口を確認しておきたい」
このような方は、相続が発生する前の段階でもご相談ください。
株式会社エヌプロでは、福岡県内を中心に建造物解体、産業物収集運搬、工事請負の業務を行っており、多種多様な現場に対応できる専門スタッフにて迅速に対応致します。
ご相談・ご依頼など、お気軽にお問い合わせください。お見積りも承ります。


