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2026.08.06
不動産相続事例:「実はもう2人兄弟がいます」……知らない相続人が見つかったら遺産分割はどうなる?【司法書士監修】

戸籍調査で「前婚の子ども」が判明した事例をもとに解説
ご家族が亡くなったあとの、実家や土地などの不動産相続。その際はまず「誰が相続人なのか」を正確に確認する必要がある。相続人が確定しないままでは、遺産分割協議や相続登記、不動産売却の手続きに進めないからだ。
ご遺族やご親族の方々は、当然、「相続人といえば、自分たちのことだろう?」と思うはずだ。
——しかし、ごくまれに「例外」が発生する。
今回紹介するのは、相続が発生したあとに戸籍を調査した結果「ご遺族が把握していなかった相続人」が新たに見つかったという福岡県内の事例である。
その場合、相続はどうなるのか。新たに現れた相続人にも遺産を分けなくてはならないのか?
前編では当社・エヌプロで担当させていただいた、実際の相談内容と解決までの流れをレポート。後編では司法書士の協力を得て、このトラブルを法律・制度の面から解説する。
前編:かつて「離婚」していた……母の秘密が引き起こした相続トラブル

相続人であるご相談者姉妹(イメージ)
「母が亡くなったので、実家の整理と売却を手伝ってほしい」
最初は、そんな趣旨の電話だった。遺品整理や持ち家の解体、不動産相続を専門にしているエヌプロにとっては、ごくありふれたご相談内容だ。
先日、90歳代の母を見送った、60代の娘おふたり。父はすでに亡くなっていた。相談者様ふたりはいずれも福岡県内にそれぞれご家庭を持ち、別々に暮らしている。
「まず、財産を調べましょう」とお答えした。母が残した財産を調べ、資産と負債の価値を確認する。そのうえで相続か放棄かを検討し、実家の不動産などについて必要な手続きを進める流れになる。
検討できる期間は「相続の開始があったことを知った時」から3か月である。さっそくエヌプロで相続財産の調査を開始すると、1か月経たずに大まかな資産状況が把握できた。
まずは、プラスの資産。
父を亡くしたあとは母が一人で住んでいた、太宰府市にある土地付きの中古戸建て。かつて家族そろって暮らした思い入れのある実家だ。建物自体は古く、上物としての価値は大きくないが、太宰府は観光地でもあり、ほどよく栄えた住みやすい街だ。立地はいい。
そのほか、銀行口座に現預金が200万円程度あった。
そして、マイナスの負債も見つかった。
携帯電話の分割払い。通販商品の定期購入。各種の税金の滞納。故人の生活の痕跡を感じさせる細かなマイナス財産も積みあがっていく。
プラス財産とマイナス財産を差し引いたとき、最終的にどの程度手元に残るのか……。エヌプロとしては、実家の解体費用や各種の整理費用、固定資産税などを支払っても、なんとかプラスにできそうだと感じた。
——お金の面では、悪くない報告ができそうだ。そう安心しはじめたとき、事態は急変した。
「すみません、急いで来てください」
相続人の確認を進めていた、司法書士からの電話だった。
不動産相続に必須の「相続人調査」で判明した、母の過去

被相続人である、母の生前の姿(イメージ)
不動産相続の手続きでは、相続財産の調査とあわせて、相続人の確定が必須となる。今回も相続登記や遺産分割協議を進める前提として、司法書士が被相続人である母の戸籍を調査した。
「戸籍謄本を見たところ、お母さんには『離婚歴』があります」
司法書士のひときわ重い声に、違和感があった。
「離婚か。ご事情あってのことだろうし、いまどき珍しくもないじゃないか」
「知ってるんですか?……相続人は」
——そこでハッとした。相談者様からは、母が離婚していたなどという話は聞いたことがない。
司法書士は続けた。
「お母さんの離婚は、相続人のふたりが『生まれる前』なんです。つまり、相続人の父は再婚相手ということになりますね。別に我々に告げることでもないとは思いますが……」
「もし、離婚を隠されていたとすれば……キツいな」
「前婚」。
ただでさえ、母を亡くして心が穏やかでない時期だ。そんなタイミングで、実は母が離婚していて生前はずっと黙っていた、などと明かされたら、誰だってショックを受ける。当然、司法書士も伝えにくいはずだ。
「わかったよ。相続人に説明にあがる際には、私も一緒に行く。しっかり受け止めていただいて、そのうえで手続きを進めよう」
助かります、と司法書士は頭を下げて、でも実はもうひとつあるんです、と言った。
「お母さんと、前夫の間に子どもが2人います」
—— え?
相談者様は、母が亡くなって初めて、父親の違うきょうだいが2人いることを知ることになったのである。
相続人は「2人」でなく「4人」! 遺族の困惑と激怒

見知らぬ「前婚の子ども」が判明した。ご報告の場は沈痛な雰囲気だった(イメージ)
「……は?」
相続人姉妹は、ふたりともポカンとした表情だった。やはり母からは何も知らされていなかったのだ。頭が真っ白になるのも無理もない。
我々も胸が苦しくなるが、淡々と戸籍調査の結果をお伝えするよりない。これは相談者様のお気持ちの問題にはとどまらない、相続手続き上でも大問題だからだ。
「お母様に、前婚の子ども2人がいらっしゃると判明しました。つまり……相続人は相談者様おふたりではなく……合計で4人ということになります」
相続のプロとして数えきれない相続案件を手掛けてきた司法書士が、今回ばかりは緊張しながら告げる。
「その2人にも、財産の相続権があります」
母の思い出を振り返りながら、プラス財産とマイナス財産を差し引きしながら……。複雑な心境で相続を進める最中に知らされた、母の秘密。相談者様はじっとうつむいて聞いている。
「つまり、遺産はその人らが半分持っていくっちゅうことですか?」
口を開いたのは、説明の場に同席していた、相続人の姉のほうのご主人だった。
「お義母さんが昔に離婚していて、子どもまでおったなんて一度も聞いたことありませんでした。本当なんですか」
「信じられない気持ちは、わかります。お母様はその子どもの親権はお持ちでなかったようですが、戸籍上は確かにふたり、前の夫とのお子様が……」
「おい、太宰府の実家は、お前らが生まれたあとに建てた家やろ?」
ご主人から声をかけられた相談者様が、力なくうなずく。
「そうやろ。じゃあ実家の相続は、前の夫の子どもとは関係なかでしょう。普通に考えて」
「いいえ、被相続人の子である以上、その方々にも均等に相続権があるんです」
「知るか!」
エヌプロと司法書士は、ひとつひとつ法制度を説明した。そのたびにご主人の声が大きくなる。ふざけんな! 何をいまさら! どうにかやりようがあるだろ!……こちらが怒鳴られるのはかまわない。ご主人も我々が悪いとは思っていない。ただ、やりきれない気持ちが抑えられないのだ。
押し黙っていた相談者様が、やっと言葉をこぼした。
「その人たちは……どこにおられるとでしょうか?」
「いま……探しているところです」
我々がそう答えた瞬間、ご主人が勢いよく立ち上がり、耐えきれないように部屋を出ていった。
「お義母さんば、最後まで世話してきたとは……俺の嫁さんと妹さんですよ!! 俺らしか、家族はおらんったい……」
最悪だ。離婚歴の発覚も、相続人の倍増も。動かせない現実だからこそ厳しい。
——とにかく、被相続人の子どもに連絡をつけなくてはならない。
新たな相続人はどこに? 司法書士による所在確認
戸籍上、前婚の子ども2人がいることは分かった。次はその2人と連絡を取り、遺産分割協議の手続きに進む。
しかし、これが難航した。前婚の子ども2人は、福岡に住んでいなかったからだ。
「新たな相続人2人は、過去に何度も引っ越しをしているようなんですよ」
司法書士は、役所に何度も通っていた。戸籍や関連資料をもとに、行政機関を一つひとつ確認しながら、現在の住所をたどっていく。転居先の自治体に問い合わせ、また別の自治体に転居が判明する。その繰り返しだった。
——2週間……3週間……。
当初から手続きを進めていた娘2人からは「なぜそんなに時間がかかるのか」と不審な声があがる場面もあった。
「どう……まだ見つからない?」
「はい。でも、必ずつきとめますよ」
——探し始めて1か月を越えたとき、2人は名古屋で見つかった。年齢は60代、姉妹で同居していた。

司法書士が見つけた「前婚の子ども」は、名古屋に住んでいた(イメージ)
先方にとっても、もちろん突然の報せだった。
長年、生き別れたように連絡がとれなかった実の母。その訃報……。そして、母が再婚後にふたりの子どもを産み、育てていたこと。これまで考えもしなかった事実が一気に届いたのだ。ある意味、もっとも困惑した当事者はこの二人だろう。
司法書士は新たに判明した相続人に対して、相続の法制度と財産状況を説明した。そして、「相続するか、放棄するか」などの判断をお願いした。二人からすれば唐突な話であるが、期限は3か月しかないのだ。
結果として、前婚の子どもふたりも状況を理解し、相続に参加することになった。
やっと、当事者が全員揃った。しかし、ここからが「山場」だ。
4人の相続人を会わせるべきだろうか……?
遺産分割協議と財産整理 1円でも高く現金化を
「対面せず、手続きを進めるべきだ」
エヌプロと司法書士はそう決めた。これは普通の相続ではない。それぞれのお気持ちがあるなかで、顔を合わせて冷静に話し合うなど無理だろう。感情的に対立しては相続そのものが台無しになるかもしれない……。各々の相続人も同じ意向だった。
司法書士が福岡と名古屋を行き来しながら、制度上の説明・財産状況の整理・必要書類の確認を進め、遺産分割協議書を作成していく。その間、エヌプロでもやらなくてはならないことがあった。
財産の整理である。相続人が4人に増えれば当然ひとりの取り分は少なくなる。ならば……エヌプロが相談者様のためにできるのは、相続分を増やすこと。つまり「財産を1円でも高く売ること」だ。
最初の試算では、遺産はプラスマイナス合計してかろうじてプラスになる程度。プラス分の多くを占める太宰府市の持ち家と土地の買い手を探し回り、もっともいい条件での売却にこぎつけた。
幸運なことに、当初の目算よりも良い条件で売却できた。実家の解体費用や税金を差し引けば、大きな利益が出るわけではない。しかし、各相続人が数十万円の金額を受け取れるようには着地できた。この時が、エヌプロとしては、やっと安心できた瞬間である。
「いろいろ、迷惑をかけたね……」
最後に相談者様にかけていただいた言葉が、ありがたかった。
——同じ母を持つ2組の姉妹は、今も福岡と名古屋で離れて暮らし、お互いの顔を知らないままである。
後編:相続で「新たな相続人」が見つかった場合に知っておきたい法律と制度
前編で紹介した事例では、娘2人だけが相続人だと思っていたところ、戸籍調査によって前婚の子ども2人が見つかり、相続人が4人になりました。
ここからは、なぜこのようなことが起こるのか、そして相続人が後から見つかった場合にどのような点に注意すべきなのかを、法律・制度の観点から整理します。

制度解説・監修:藤本一英(FNG司法書士事務所)
司法書士・行政書士・宅地建物取引士・ファイナンシャル・プランナー。不動産登記、相続・遺言に関する手続きを中心に幅広く業務を行う。
不動産相続では、まず相続人を確定する必要がある

不動産相続では、最初に「誰が相続人なのか」を正確に確認する必要があります。相続人が確定しなければ、実家や土地を誰が取得するのか、売却して代金をどう分けるのか、相続登記をどう進めるのかを決められないためです。
相続人調査とは、被相続人が亡くなったときに、誰が法定相続人になるのかを確認する作業です。このとき、家族の記憶や親族間の認識だけで判断することはできません。
- 「子どもは自分たちだけだと思っていた」
- 「親に離婚歴があるとは聞いていなかった」
- 「疎遠な親族のことは知らなかった」
このような事情があっても、法律上の相続人が別に存在する可能性があります。
そのため、相続登記や遺産分割協議を進める前提として、戸籍を確認し、法律上の親族関係をたどることが重要です。法務省は、戸籍について「人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもの」と説明しており、戸籍は相続人を確認するうえで重要な資料です(出典:法務省「戸籍」)。
今回の事例でも、司法書士が戸籍を確認したことで、母に前婚歴があり、その前婚の子ども2人が相続人になることが分かりました。
相続人調査では、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を確認する

相続人調査では、現在の戸籍だけを確認すれば足りるとは限りません。戸籍は、婚姻、離婚、転籍、法改正による様式変更などによって、過去の記録が別の戸籍に移っていることがあります。
そのため、相続人を正確に確認するには、主に次のような戸籍資料をたどります。
- 戸籍謄本
- 除籍謄本
- 改製原戸籍
戸籍謄本は、現在の戸籍に記載されている内容を確認するための書類です。除籍謄本は、戸籍に記載されていた人が婚姻や死亡などによって全員除かれた戸籍などを確認するために使われます。改製原戸籍は、戸籍制度の改製前の古い戸籍を確認するためのものです。
現在の戸籍だけでは、過去の婚姻歴や離婚歴、前婚の子どもの存在までは十分に分からないことがあります。今回のように、戸籍をさかのぼった結果、初めて「前の配偶者との間に子どもがいた」と判明するケースもあります。
相続人調査は、単なる形式的な作業ではありません。不動産相続の手続きを進めるために、法定相続人を確定する重要な工程です。
前婚の子どもにも相続権はある|親権・同居・家の取得時期とは別問題

相続で特に誤解されやすいのが、前婚の子どもの扱いです。たとえば、次のように考えてしまう方もいます。
- 「離婚しているから、前婚の子どもは関係ない」
- 「一緒に暮らしていなかったから、相続人ではない」
- 「親権がなかったなら、相続権もない」
- 「家族が存在を知らなかったのだから、遺産分割協議に入れなくてもよい」
- 「離婚後に取得した不動産だから、前婚の子どもには関係ない」
しかし、相続で重要なのは、被相続人との間に法律上の親子関係があるかどうかです。民法第887条では「被相続人の子は、相続人となる」と定められています。前婚の子どもであっても、被相続人の子どもであることに変わりがなければ、相続人になります(出典:e-Gov法令検索「民法」第887条)。
離婚によって夫婦関係は解消されます。しかし、親子関係が当然になくなるわけではありません。また、親権と相続権も別の問題です。
親権は、未成年の子どもの監護や財産管理などに関する権利義務です。一方、相続権は、被相続人が亡くなったときに、法律上の相続人として財産を承継する地位に関するものです。
そのため、親権がなかった場合や、長年一緒に暮らしていなかった場合でも、法律上の親子関係があれば相続人になります。
今回の事例でも、前婚の子ども2人は母と一緒に暮らしておらず、母が亡くなったことも知りませんでした。それでも、母の子どもである以上、相続人として扱う必要がありました。
また、今回の相続財産には、太宰府市の実家が含まれていました。当初から相続手続きを進めていた娘2人にとっては、自分たちが育った家であり、前婚の子どもとは関係がないように感じられたかもしれません。
しかし、民法第896条では、相続人は相続開始時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされています。そのため、被相続人が亡くなった時点で所有していた不動産は、原則として相続財産になります(出典:e-Gov法令検索「民法」第896条)。
- その不動産をいつ取得したか
- 前婚の子どもがその家に住んでいたか
- その家に思い入れがあるか
- 家族がその存在を知っていたか
これらの事情だけで、相続権の有無が決まるわけではありません。感情的には受け入れがたい場面であっても、法律上の親子関係がある以上、前婚の子どもを含めて遺産分割協議を進める必要があります。
相続人が2人から4人になると、法定相続分と協議の前提が変わる

今回の事例では、当初は娘2人だけが相続人だと考えられていました。もし相続人が娘2人だけであれば、法定相続分は原則として2人で均等に分ける形になります。
しかし、戸籍調査によって前婚の子ども2人が判明し、相続人は合計4人になりました。
配偶者がすでに亡くなっており、子どもだけが相続人になる場合、法定相続分は子どもたちで均等に分ける考え方になります(出典:e-Gov法令検索「民法」第900条)。
つまり、今回のケースでは、当初は2人で協議すればよいと思っていた相続が、4人全員で協議しなければならない相続に変わりました。1人あたりの法定相続分の目安も変わります。
ただし、法定相続分は、必ずその割合で分けなければならないという意味ではありません。実際の分け方は、相続人全員の合意による遺産分割協議で決めることができます。
重要なのは、相続人が増えると、分配だけでなく協議の前提そのものが変わるという点です。不動産を売却する場合でも、売却後の代金をどう分けるのか、諸費用をどう扱うのか、誰がどの書類に署名・押印するのかなど、相続人全員を前提に整理する必要があります。
今回、当初から手続きを進めていた娘2人が大きな衝撃を受けたのは、このように相続の前提が大きく変わったためです。
相続人が漏れたまま遺産分割協議を進めるリスク

相続人が複数いる場合、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。
もし、相続人の一部が漏れたまま遺産分割協議書を作成してしまうと、後から見つかった相続人を含めて協議をやり直す必要が生じる可能性があります。その結果、相続登記・不動産売却手続きの停滞にもつながります。
特に不動産相続では、相続登記や売却の場面で相続関係を確認されます。相続人が確定していない状態では、実家や土地の名義変更、不動産売却を進めることは難しくなります。
今回のケースでも、もし戸籍調査をせず、娘2人だけで遺産分割協議を進めていたら、後から前婚の子ども2人が見つかり、より大きなトラブルになっていた可能性があります。
だからこそ、相続人調査は「念のため」ではなく、不動産相続の前提として必要な手続きなのです。
相続するか放棄するかを判断するには、財産調査も欠かせない

知らない相続人が見つかった場合、その人にも相続が発生したことを説明し、相続するか放棄するかなどを判断してもらう必要があります。そのためには、相続財産の内容をできる限り整理しておかなければなりません。
今回の事例では、相続人調査と同時に、財産調査も進めていました。プラス財産としては、太宰府市の土地付き中古戸建てと現預金200万円程度がありました。
一方で、携帯電話の分割払い、通販商品の定期購入、各種税金の滞納など、細かなマイナス財産も見つかりました。
相続では、プラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナス財産も引き継ぐ可能性があります。そのため、相続人は大きく分けて次の選択肢を検討することになります。裁判所も、相続人が選択できるものとして、単純承認・相続放棄・限定承認を挙げています(出典:裁判所「相続の放棄の申述」)。
- 単純承認:プラス財産もマイナス財産も含めて、被相続人の権利義務を引き継ぐ方法
- 相続放棄:被相続人の権利義務を一切引き継がない手続き
- 限定承認:相続によって得た財産の範囲で、被相続人の債務を負担する方法
プラス財産だけ相続して、借金や未払い金だけ放棄することはできません。
限定承認は、プラス財産とマイナス財産のどちらが多いか分からない場合などに検討されることがあります。ただし、相続人が数人いる場合、限定承認は共同相続人全員が共同して行う必要があります(出典:裁判所「相続の限定承認の申述」)。
今回のように、後から相続人が増えたケースでは、相続人全員の意思確認が必要になるため、限定承認を検討する場合も調整に時間がかかりやすくなります。
相続放棄の3か月ルールと期間伸長
相続放棄や限定承認では原則として、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。
裁判所も、相続放棄の申述は、民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと説明しています(出典:裁判所「相続の放棄の申述」)。
ここで重要なのは、3か月の起算点です。単に被相続人が亡くなった日から一律に数えるのではなく、その相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算されます。
今回、新たに判明した相続人2人は、母が亡くなったこと自体を知りませんでした。そのため、連絡を受けた後に、相続財産の内容を確認し、相続するか放棄するかなどを判断する必要がありました。
また、相続財産の状況を調査しても、3か月以内に単純承認・限定承認・相続放棄のいずれを選ぶか判断できない場合は、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てることができます(出典:裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。
プラス財産とマイナス財産が混在している場合や、後から相続人が見つかった場合は、期限を意識しながら早めに財産調査を進めることが重要です。
新たな相続人が見つかった場合の進め方

戸籍調査で新たな相続人が見つかった場合、まず行うべきことは所在確認です。戸籍上、相続人の存在が分かっても、現在どこに住んでいるかがすぐに分かるとは限りません。
今回の事例でも、新たに判明した相続人2人は何度も引っ越しており、名古屋で見つかるまで1か月以上かかりました。
所在が分かった後は、相続が発生したこと、被相続人との関係、財産の内容、相続するか放棄するかなどを判断する必要があることを説明します。そのうえで、相続する場合には遺産分割協議に参加してもらう流れになります。
このとき、相続人同士が直接連絡を取り合うと、感情的な対立が起こることもあります。特に今回のように、家族が知らなかった前婚の子どもが見つかったケースでは、当初から相続手続きを進めていた相続人側に強い戸惑いが生じることもあります。
そのため、必要に応じて司法書士や弁護士などの専門家へ相談し、制度上の説明や必要書類の確認を行いながら、慎重に手続きを進めることが大切です。
相続登記や不動産売却には、相続人全員の協議が重要
不動産が相続財産に含まれている場合、相続人を確定したうえで、その不動産をどう扱うかを決める必要があります。
- 売却するのか
- 誰かが取得するのか
- 共有にするのか
- 代償金を支払って調整するのか
不動産は、現金のように簡単に分けられるものではありません。相続人全員で遺産分割協議を整えたうえで、その内容に応じた相続登記や不動産売却に進むことになります。
相続登記は2024年4月1日から義務化されています。法務省は、相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があり、遺産分割が成立して不動産を取得した場合も、その成立日から3年以内にその内容を踏まえた登記申請が必要と説明しています(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
また、不動産相続では「相続人申告登記」という制度を目にすることもあります。
相続人申告登記は、期限内に相続登記の申請をすることが難しい場合に、簡易に相続登記の申請義務を履行するための仕組みです。ただし、相続人申告登記は不動産についての権利関係を公示するものではないため、それだけで相続した不動産を売却できるようになるわけではありません。また、遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することもできません(出典:法務省「相続人申告登記について」)。
つまり、実家を売却したい場合には、相続人を確定し、必要な遺産分割協議を整えたうえで、その内容に応じた相続登記を行う必要があります。
今回のケースでは、司法書士が相続人調査や遺産分割協議書の作成を進め、エヌプロが不動産売却の面から支援しました。法律上の手続きと、不動産としての出口を同時に考えたことで、最終的に相続手続きを完了できました。
法定相続情報証明制度を利用できる場合もある
相続人調査を行った後は、相続関係を一覧に整理する「法定相続情報一覧図」を作成し、法務局の法定相続情報証明制度を利用することもあります。
法定相続情報証明制度は、相続人が戸除籍謄本などの束と法定相続情報一覧図を登記所に提出し、登記官の確認を受けることで、認証文付きの一覧図の写しの交付を受けられる制度です。相続登記や金融機関での手続きなどで、戸籍一式を何度も提出する負担を減らせる場合があります(出典:旭川地方法務局「法定相続情報証明制度」)。
今回のように、相続人が複数おり、戸籍調査で前婚の子どもが判明したケースでは、相続関係を正確に整理することが重要です。法定相続情報一覧図を作成しておくことで、その後の相続登記や金融機関での手続きが進めやすくなる場合があります。
「知らない相続人」が見つかる前にできること
家族が知らなかった相続人が、相続開始後に見つかることはあります。特に、次のような事情がある場合は注意が必要です。
- 親に離婚歴・再婚歴がある
- 家族関係について詳しく聞いたことがない
- 戸籍を確認したことがない
- 疎遠な親族がいる
- 実家や土地を相続する予定がある
- プラス財産とマイナス財産の両方がありそう
相続が発生する前に、親族関係や財産の内容を整理しておくことは、将来の不動産相続のトラブル予防につながります。
たとえば、所有している不動産の一覧、固定資産税通知書、登記情報、預貯金、借入、未払い金などを整理しておくと、相続発生後の手続きが進めやすくなります。
また、離婚歴・再婚歴・前婚の子どもなど、相続人に関わる情報がある場合は、できる範囲で確認しておくことも大切です。必要に応じて、遺言書を作成し、自分の財産を誰にどのように残したいのかを明確にしておく方法もあります。
ただし、遺言書を作ればすべての相続トラブルを防げるわけではありません。遺留分の問題が生じることもあるため、前婚の子どもがいる場合や、不動産を特定の相続人に残したい場合は、司法書士や弁護士などに相談しながら進めることが大切です。
実家の不動産相続で不安がある場合は、早めに専門家へ相談を

不動産相続では、相続人調査、財産調査、遺産分割協議、相続登記、不動産売却など、複数の手続きが関係します。その中で、知らない相続人が見つかると、手続きはさらに複雑になります。
今回の事例では、戸籍調査によって前婚の子ども2人が見つかり、一時は強い戸惑いもありました。しかし、司法書士が間に入り、エヌプロが不動産売却を支援したことで、最終的に相続手続きを完了できました。
- 相続人が本当に誰なのか分からない
- 親に離婚歴や再婚歴があるかもしれない
- 実家の相続登記や不動産売却をどう進めればよいか分からない
このような場合は、相続が発生した後に慌てるのではなく、早めに専門家へ相談することが大切です。
エヌプロでは、相続不動産の売却だけでなく、司法書士などの専門家と連携しながら、相続人調査や遺産分割協議が必要なケースにも対応しています。
実家や土地の不動産相続でお困りの方は、まずは状況整理からご相談ください。
株式会社エヌプロでは、福岡県内を中心に建造物解体、産業物収集運搬、工事請負の業務を行っており、多種多様な現場に対応できる専門スタッフにて迅速に対応致します。
ご相談・ご依頼など、お気軽にお問い合わせください。お見積りも承ります。


